サイトへ戻る

戦略的副業マネジメントのすすめ

2021年2月26日

みなさんこんにちは。才知修養学舎の須東です。

突然ですが、みなさんは「副業・兼業」をどう考えますか?

会社が禁止しているからやらない?自身でやってみよう!と思えない?社員が辞めてしまいそう?

まだまだ日本において、副業はマイナーです。

今回は企業が「戦略的」に副業を推進していくメリットについて書かせていただきました。

企業はイノベーションを重要な戦略に位置付けています。イノベーションに欠かせない人事施策としてダイバーシティ・マネジメントが挙げられます。実際、多くの企業ではダイバーシティ・マネジメントを重要施策として取り組んでいますが、同時に出来ていないこととして課題に挙げている企業は少なくありません。

ダイバーシティという言葉は、通常は日本語で「多様性」を表し、性別・国籍・人種・年齢など様々な違いを問わず「多様な人材を認め、活用すること」です。(出典:大辞林)。

日本企業で働く人、特に中高年齢者(大半が男性正社員)になると、組織内での人間関係を深化させていくことで効率的に問題解決できることを、多く経験しています。また、年功序列を重んじ、上の言うことに服従し、言われたことをしっかり行うことで成功体験を積んできました。

こうしたことから自分たちへの反対意見する人材や和を重んじない輩を排除したり、中途採用者には「お手並み拝見」といった具合で、ダイバーシティの「ダ」の字も意識はありません。

自分たちの組織に入った「よそ者」を排除するのであれば、逆に自分のいる組織外で仕事して、「よそ者」として扱われることを体験させる必要があります。そうすればダイバーシティの意味や気づきが生まれる可能性があります。そしてダイバーシティの実現に一歩近づきます。

その手段として副業・兼業があります。しかし副業・兼業を認めることに企業は積極的でありません。2019年リクルートキャリアの調査では企業の70%が禁止しています。副業・兼業を推進する企業は4.4%しかありませんでした。

積極的でない理由として「現業がおろそかになる」「現業が忙しい」からとする企業は多いです。自社の業績低下や副業・兼業して健康へ影響出ることは心配であり、導入しない理由になります。一方、導入理由や背景は「社員の収入増につながる」「特に禁止する理由がない」が1位、2位であったが、「人材育成・本人のスキル向上につながるため」が最も上昇し、次いで「社員の離職防止につながるため」でした。

兼業・副業の導入による効果のうち、「人材採用への効果」「社員の離職防止・エンゲージメント向上への効果」で効果があったと回答した企業が前回調査より増加したとのことでした。また、兼業・副業経験者による本業への還元では、34.0%が「還元できている」と感じています。還元効果を感じ始めた時期のうち、「兼業・副業を認めてから、1 年以内」が最も高く(42.9%)、次いで「兼業・副業を認めて、すぐに」であったとの回答が21.6%もありました。

人材マネジメントの観点からも副業・兼業を認める企業が増えてもいいはずですが、正社員の副業意向で、特に若い人の副業意向が高いことが躊躇する理由であると考えられます。パーソル総研調査では男性20代の55.2%、女性20代の59.1%が副業意向ありと回答しています。また30代も男性43.9%、女性49.1%と意向強い。一方、40代男性36.3%、50代男性27.6%と意向が低い結果となっています(40代女性41.6%、50代女性32.1%)。ダイバーシティの実現に向けて中高年正社員男性に行ってもらいたいが意向は弱く、むしろ意向の高い若手正社員が副業に行ってそのまま帰ってこない、転職することを恐れるあまり推進・容認が進まないのでしょう。

副業・兼業が容認・推進できるようになるために「若者正社員問題」に取り組まないといけません。

色々見ていると、兼業・副業を推進している企業と禁止している企業は人事部門の在り方が大きく影響していると言っても過言ではありません。

禁止している企業の人事部門はあらゆることに対して形式的で、届け出を提出させ審査し、可不可を一方的に通達しているだけです。現場や働いている人の気持ち・行動を理解しようとしていません。

一方、推進している企業の人事部門は、「成長したい」「変わりたい」「新しいことをしたい・生み出したい」と思っている人材は、将来の「人的資本」候補としてコミュニケーションできる機会を常に探っています。また、そういった人材から見た在籍している職場や組織の状況を知る良いチャンスだと思っています。

兼業・副業したい人材はまさにそれらに当てはまる人材であり、そういった人材が在籍している職場や組織をどう見ているか知ることをできるいい機会だと思っています。

副業・兼業を推進している企業の人事責任者にどうコミュニケーションをしているか伺いました。副業・兼業したい人材とは人事責任者自ら面談する機会を持ちます。そこでは副業をどのようにして選んだのか、そこで何を得たいのか、そこで得られたことを自分の将来にどう活かすのか、社内でどのように活かしたいのか、現部署なのか、違う部署なのか、新しい部署なのかを伺うそうです。そして毎月、目指すべき目的の進捗状況を聞き、半年後をひとつの目安として社内でどのように活かしてもらうか「どこで」「誰と」「何を」「どのように」などコミュニケーションしていくそうです。副業期間が終わって今後の希望が叶う・叶わないという結果がどうであれ、人事トップと色々やり取りができたこと、ちゃんと見てくれて、きちんと話を聴いてくれたことがその人のエンゲージメントを高め、その後バリバリと仕事をしてくれるとのことでした。副業した本人もその上司も人事部門もまさしくwin-winで働く人・組織力も高まる良い事例だったと思います

サイバーエージェント曽山常務の「人事部はコミュニケーションエンジンたれ」をどう実践しているのか理解できます。

こうした事例をもとに若者正社員が副業・兼業を通じて自能力を高め、組織に貢献してくれれば、むしろ副業を推進できます。また中高年正社員も自組織から組織外に出て副業・兼業

する勇気も出てくるのではないかと思いました。

人事部門のミッションは『働く人の多様化を満たせるように「100人100通りの人事制度」構築と運用』『あるべき組織文化をイメージして経営を担う人材創り』だと思っています。副業・兼業はミッションコンプリートできるツールとなりうるものです。企業は戦略的に副業・兼業を人材マネジメントシステムに組み込むことが大切なのです。